2010年4月6日火曜日

ケンブリツジ 駆けある記(2001年7月)

 今年はイギリスへ行ってみようと思い立った。行くからには長女が1976年短期留学したケンブリツジには是非立ち寄ってみたい。旅行各社の旅程を比較検討した結果H社の8日間のツァーに参加することにした。これならロンドン半日観光後のフリータイムでケンブリツジ見学が可能と推定した。

1.地下鉄ピカデリー・サーカスPiccadily Circus駅
 2001年6月28日 中華レストランへ昼食に行くツァーの一行と別れて地下鉄ピカデリー・サーカス駅へ向かう。バスの運転手に「Tubeはどの方向か?」と尋ねると「真っ直ぐ前方へ」と。ロンドンではSub wayは”地下道”、”地下鉄”はTubeと聞いていたが、入り口はUndergroundと表示されていた。デートの待ち合わせで有名な”エロスの像”を撮る暇もなく地下に潜る。

 ずらりと並んだ切符自販機の前で当惑していると、「出札窓口は角の向こうに」と日本語で女性の声。窓口に”Assistance and Ticket(お手伝いと切符)と書いてあるのが嬉しい。本日の一日乗車券Oneday travelcard(@4ポンド 約800円)を買う。朝9時半以降Zone1.2
 区内の地下鉄・バスは乗り放題である。自動改札機に差し込んで、先で取り上げると扉が開く。

 紫色のガイドラインに沿ってピカデリー線のホームに出る。この駅は茶色のベーカールー線と2本しか通っていないので迷うことは無い。キングズ・クロスKing’s Cross駅はCockfosters行きに乗って5つ目である。成る程Tubeと言うだけあって坑道も丸ければ、車両も丸い。1890年電化されるまでは、この狭い管路を蒸気機関車で運転していたと言うから、さぞ煤煙で苦労したことであろう。ホームにはこれから通る駅名入りの路線図が掲示してあるので、目的駅まであといくつと判りやすい。過ぎた駅名は省略されている。キングズ・クロス駅で下車、一日券を改札機に挿入・取り出して外に出る。



2.キングズ・クロスKing’s Cross駅
 出札窓口で「ケンブリッジ2枚」と言うと「この後ろ、ずっと右奥だ」という。そうだ、ここは地下鉄の切符売り場であつた。
 King’s Crossの案内板に従って鉄道切符売り場に辿り着く。イギリスでは民営鉄道数社が競合して運行しているので、会社毎に切符売り場が異なる。キングズ・クロス駅でもスコットランド地方へはGNER(Great North Western Railway)、ケンブリツジ方面はWAGN(West Anglia Great Northern Railway)が運行している。

 ケンブリッジ行きをCheap Day Returnで買う(@15ポンド 約3000円)。これは朝夕のラッシュを避けて、当日のみの往復という条件付割引切符である。それにしては高い。念の為「復路に午後5時頃乗車OK」を確かめてホームに出る。
 出発の電光掲示板によればケンブリッジ方面行きは13時15分(以下 時分省略)9番ホームとあるが1-8番までしか見当たらない。やむなく8番ホームの奥を探すと仕切り壁の向こうに9a(出発) 9b(到着)のホームがあつた。この間に13.15発は出発してしまって、次は13.45発である。ベンチの婦人に確かめたあとホットドックとコーヒーで昼食を済ます。


3.ケンブリッジCambridge到着
 定刻発車してケンブリッジまでノン・ストップである。途中の通過駅でもスピードを落とすことなく、すっ飛ばして45分で到着。日中のこととて乗客は少ない。この間車内検札が一回あった。ホームに降り立つと目の前に鉄道案内所と観光案内所がある。タクシーでラウンド・チャーチに向かう。予め詳細地図が手元にあるので心強い。

 一本道の筈だが途中右折左折を繰り返して到着する。カレッジが立ち並ぶ市中心部は一方通行や進入禁止などの交通規制があるらしい。

 この古風な建物はエルサレムの聖墓教会を記念して1130年頃建てられたもので、イギリスでは数少ない円形教会の一つである。ラウンド・チャーチRound Church(丸い教会)と通称されてケンブリッジ名所の一つである。円錐形の屋根は19世紀に加えられたという。



4.ユニオン・ソサェティUnion Society
 探しもとめたユニオン・ソサェティは、この教会の横をすり抜けて裏手にあった。事務所で「ケンブリッジ・ランゲージ・センターCambridge Language Centreは?」と聞くが「知らない、講義室なら奥にあるが」との返事。通りがかった日本人学生らしい青年にセンターやホーム・ステイ先の住所のメモを渡して訳を話すと「カレッジの事務所で聞いて来ましょう」と手伝ってくれる。京都出身という。しばらくして曰く「その住所は確かに現存しているが学校・女主人名を知っている人は居なかった」。この話を傍で聞いていた女子留学生は名古屋出身ということで、ひとしきり話に花が咲く。あと5年はこの地で勉強とか。

 食堂で一緒に写真を撮ったあと談話室やバーを見学して、売店でコーラを買おうとしたらユニオンの会員カード専用と言う。ユニオン・ソサェティ自身、ケンブリッジ各カレッジの共同経営による学生援護施設のようである。

5.大学都市 ケンブリッジ
 1284年イーリー司教ヒュー・ド・ボルシャムが創立したピーターハウスPeterhouseがケンブリッジ最初のカレッジである。

 壮麗な礼拝堂で有名なキングズ・カレッジは1441年、
 クィーンズ・カレッジは1446年、
 ケンブリッジ最大のトリニティ・カレッジは1546年の創立。
 
 以後1977年創立のロビンソン・カレッジまで、ケンブリッジは近郊を含めて31のカレッジ(1988年現在)を擁する有数の大学都市である。その間60人以上のノーベル賞受賞者が輩出している。
 落ちる林檎で万有引力を発見したアイザック・ニュートンは1661年トリニティ・カレッジに入学、「種の起源」を著した進化論のチャールス・ダーウィンは1828年クライスツ・カレッジに入学していることは有名である。

6.カレッジは卒業シーズン
 ユニオン・ソサェティをあとにセント・ジョージ通りを南下してトリニティ・カレッジに行ったが大門が閉まっていて入れない。数人の観光客が残念そうに、何度も大門を見返っていた。更に南のキングズ・カレッジも「今日は卒業式で入れないが、明日からは見学出来る」とのこと。隣接する市の評議員会館では卒業生たちが背中に白線入りのガウンのような式服を着て学位を受けに集まっている。6月末はGeneral Admissionと呼ばれる卒業式期間である。

 トリニティ通りからキングズ・パレイドのメイン・ストリート沿いは軒並みカレツジである。特にキングズ・カレッジの礼拝堂は1515年完成、ケンブリッジの象徴的建物として一際威容を誇っている。南隣りのクイーンズ・カレツジは卒業式も済んだとみえて、@4ポンドで見学OKだったが16時閉門まであまり時間が無い。ゲートからキャンパスを背景に写真を撮り、傍の売店で栞などを買って退出する。

7.ケム川界隈
 裏手のケム川に架かる数学橋の下をパント(平底の小船)に揺られての舟遊びはケンブリッジののどかな風物詩である。この橋は建設当時、木を巧みに組み合わせて釘を使わなかったので”数学橋”と名付けられたというが、その後の補修では釘も使っているらしい。もともとケンブリッジという市名もケム川Camに架かる橋Bridgeから来ている。

 ケム川西岸からバックスと呼ばれる草地越しに各カレッジを眺め歩くのがお勧めとガイドブックにあるが、時間が無いので割愛して駅に向かう。折角タクシーを拾ったのに交通渋滞で一向に進まない。

8.ケンブリッジ駅
 漸くケンブリッジ駅に着いて16.45発キングズ・クロス行きに乗ろうとしたらCanceled (取り消し)、次は17.15発である。ホームに時刻表が貼り出してあるが、複数の鉄道会社の時刻が入り混じって、WAGNのを見つけ出すのが一寸面倒である。「間違って他の会社の列車に乗ってしまうと、長時間の迂回コースで違約料金まで請求されてしまう」とはユニオンで逢った女子留学生のアドバイス。

 17.15を過ぎても発車しない。同乗の紳士に丁重に確かめると「間違いない」という。結局ケンブリッジ始発にもかかわらず15分の遅発である。どうもイギリスの鉄道は運賃が高い割に、平気で遅延・取り消しをするので評判が悪いようである。ほぼ満席で途中ノン・ストップ、18.15にはキングズ・クロス駅に無事到着した。復路は検札ノーチェックであった。

9.アールズ・コートEarl’s Court駅
 鉄道のキングズ・クロス駅から地下鉄のキングズ・クロス駅までは沢山の案内板はあるものの、6路線が交差・並走しているので、目指すピカデリー線のアールズ・コート方面行きのホームに出るまでが一苦労である。途中係員らしい人に確認しながらヒースロー空港行きに乗る。退勤時なのでほぼ満席である。 

 11番目のアールズ・コート駅に18.45着。これなら19時ホテル発、夕食への出発に間に合いそうである。
 南側出口への案内板に従ってエスカレーターを乗り継ぐうち、地上のプラット・ホームに出てしまった。通路を間違ったかと一瞬たじろいだが、並走するウィンブルドン行きのディストリクト線のホームであった。 その先に出口への表示があり、ほっと一安心。

 改札口を出て地図を片手に初めての道をホテル・パラゴンへ一目散。18.55ホテル着、荷物を部屋に置いて、19時集合、出発。夕食に滑り込みセーフであった。

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